一日目

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部屋に戻ってからすぐにベッドに入る。しかしどういうわけか全く眠くならなかった。少し昼に寝過ぎたのかもしれない。 それにしても。 「ライカ……」 何故、知っていたのだろう。それだけじゃない、子供の頃大切にしていたおもちゃ箱をひっくり返したかのような懐かしさを今日だけで何度も感じていた。これは一体誰の記憶なのだろう。 「やっぱり、リファータちゃんの――」 そこまで言って、また少し不安になった。確信が持てず、自信がない。絶対に自分の記憶ではないのだからリファータ記憶のはずだ。しかし、それをどうやって証明する? 地球に帰りたい気持ちはある。しかし、この違和感を解くまでは帰れない気もする。そうでないと、これから一生自分を信用できない気がした。 「……」 やっぱり、今は一人でいるのが怖い。胸が、少し傷んだ気がした。それほど彼のすぐ横が居心地よかった。 気を紛らわせようと何かしようと思った。誰か起きていないかと思ったが、もう既に寝静まっていた。部屋の掃除をしようにも、部屋のどこも塵一つ落ちていない。書斎の扉には鍵がかかっている。スマホなんてない。 日記を書くことにした。今日起こったこと全部。勿論、今まで住んでいたところについても余すところなく書き込んだ。これでこの日記は誰にも見せられない。 「……こんなもので良いかな」 普段日記なんて書かない梨波は、何をどう書けばいいのかしばらく悩んだ。試行錯誤を繰り返し、形になってようやく瞼が下がって来た。完全に閉じてしまう前にこの日記を隠さなければ。 魔法のことを書いてまとめたノートと共に、クローゼットにあった多くのバッグの一つの中にしまいこんだ。 梨波はあくびをするとベッドにもぐりこんだ。自然とライカと過ごしたあの時間を思い出していた。別段特別なことなんかしていない、ただ二人で本を読んでいただけだ。それでも思い出すなんて、それほど彼の隣が居心地がよかったのか。自分でもわからない。 ――次会えるのはいつになるのかな…… そういえば彼は家に遊びに来いと言っていた。彼の家どころか自分の家すらどこにあるのかわかっていなかったが、もしまたすぐに会えないのなら、できれば行きたかった。なんでこんな気持ちになるのか。そんなことを考えながらいつの間にか梨波は眠りに落ちていた。
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