二日目

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二日目

「ーーっ!?」 梨波は飛び起き、安心していることに気が付いた。何故か心臓がバクバクいっている。どうやら悪夢を見ていたようだ。 どんな夢を見ていたのか。覚えていなかったが、それで良かったとも思える。 そのとき、小さなノックの音がしたかと思うと、昨日の男性の使用人が音を立てないように入ってきた。 「ああ…… もうお目覚めですか。随分とお早いのですね」 「そうかな……?」 そう言って外の景色を見ようとして、昨日のことを思い出した。 ──そうだ、この世界って朝でも夜なんだ。 「って、五時!?」 この世界は太陽が出ない。通りでさっきから寒いと思ったはずだ。男性も薪を持ってきている。 「今から薪をくべるので、暖かくなるのではないでしょうか?」 「ありがとう……」 静かに、存在を消すかのように彼は薪をくべていく。その気遣いが居心地良く、もうひと眠りしようかと考えたが、やはりまだ寒く、最早目も冴えてきた。 「あ、あの」 「なんでしょう?」 ――ライカの家までの道って知ってますか? 「……」 「どういたしました?」 「あ、いや別に何でも…… ない、です」 何故かその言葉が口から出てこなかった。 「今日は何日だったかなって確認したかったんです」 「……そうですか。本日は十二月四日の水曜日でございます」 地球と日付感覚は同じようだ。それにありがとうと答え、それから仕事を邪魔しないように極力話しかけないようにした。 静かにしてみると辺りには薪が重なり合う音、それが燃える音しか響かず、窓があるにも関わらず鳥の声すら聞こえてこなかった。かなりの防音設備なのかもしれない。恐るべし、宮廷。 そんなことを考えていると、男性は終えたのか「失礼いたしました」とだけ残し、部屋から出て行った。 こんなにも静かで暗い環境ならば、この時期丁度のふたご座流星群は素晴らしく綺麗に見えるだろう――そこまで考えかけて、有香のことを思い出した。 今地球が何時なのかは分からないが、きっと私がいないことに気付いているであろう有香。彼女の事を思い出して梨波は涙ぐんだ。 「ごめんね…… ほんとに……」 ――今年も私、一緒に見れそうにないね…… 落ち着いた頃、時刻は六時を少し回ったところだった。
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