二日目

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「リファ? どうしたの? 全く手が動いていないじゃない」 「……え? あ、今何か言いました……?」 どうにも上手く話の調子を合わせることが出来ない。少年にはなにか探られているような、それでいて優しい不思議な雰囲気があった。何もかも見透かされているような、そんな恐ろしさと、相談してしまおうかと思う、この心。それと葛藤していると、話しかけられたことに気付けず反応が出来ない。さっきから両親から心配されている。 「……あー、少し考え事。体調が悪い訳じゃないので大丈夫です」 「それなら良いのだけど……」 こうして話している内も、考えているのは今朝のこと。彼はまだ私の部屋の窓の辺りにいるのかしら。 「……本当に大丈夫なの?」 「……大丈夫。あんまり食欲ないし、今日はこれで…… ごめんなさい」 もしまだ彼がいるんだとしたら、なるべく両親には心配をかけないようにして、話に応じて見てもいいかもしれない。 部屋に戻る。使用人は心配し、部屋まで付いてきてくれたが、体調が悪い訳ではないことをどうにか説明し、お昼になるまではそっとしておいて欲しいと伝えた。 彼は宣言通り、窓枠に座って待っていた。 「……来てくれたんだ?」 「うん。今日は君の誘いに乗ってもいいかなって思って」 「……じゃあ、こっちまで来てよ」 そう試すように言うと、彼は窓の外1メートル程に浮かんだ。 ──いやいや死ぬ! 怖い! そうは思っても声に出すことは出来ない。こんなよく分からない世界にいきなり飛ばされた二日目には、自分に魔法が使える前提で身投げしろと言われる。彼は何かを察しているようにも思える。ここで飛び出さないで、どう自分が本物のリファータだと認識させるのか。最早意地だ。 「……来ないの?」 「っ、行くよ!」 そう言うと梨波は部屋から飛び出した。
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