一日目

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「そもそも欲しい新作ゲームってどうせまたあの宇宙のやつの続編かなんかでしょ? そんなの買ってたらきりがないよ」 「どうせって言わないでよ、あれはまじで名作なんだから! あんたの家がゲーム環境良ければ貸してあげるのに……!」 そういうとまたあのゲームの話をしだした。これで十回目にはなると思う。 『The Space Tale』…… 主人公はその性格ゆえ皆から嫌われていて、ある日とうとう殺人事件の濡れ衣を着せられてしまう。それでも主人公は金持ちだったので宇宙に逃げる事へ成功する。しかし、そこでエンストを起こし、たどり着いた惑星にて生命体に出会う。彼は金持ち生活が長かったので、手に入らないものはないと、最初はその惑星に住んでいた生命体を次々と殺して回り、自分だけの帝国を作り上げようとするが、そこで命の大切さについて学び、今までの自分の性格を省みる、という話だ。そもそも宇宙に逃げるというのがぶっ飛んでいるし、一作完結のような物語なのによく続いているなとつくづく思うけど、有香は「そこがいいんじゃん!」とゲームに浸っている。 「あたしはこのゲームの良さがわからない人間とは分かり合えない」 「あっそう。じゃあ私とは友達じゃないってことね」 言ったな? と笑いあう。いつもの流れだ。 「そうそう。The Space Taleの話で思い出したんだけど、今日からようやくふたご座流星群の活動期間よね。見れると良いなぁ」 「うん、絶対見たい」 以前から一緒に見に行こうと約束していた、流星群観測。前回は丁度見頃を迎えるときに雨が降っていて見ることが出来なかった。 「絶対見に行くんだから予定空けといてよ?」 「当然」 じゃあ、と分かれ道で別れた。 彼女には本当に感謝している。 今回の見頃の期間を調べて来てくれたのも、いい場所を見つけてくれたのも彼女だった。
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