一日目

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「さてと……」 部屋に戻ってから空いているノートを拝借し、それに魔法についてわかったことを記録し始めた。 ・魔法を操れるのは魔導士の血を引く者のみだが、今から数百年前に魔術士が王になった時代があり、その頃にこの国の住民の大半が魔法を操れるようになり、今では魔法を操れない者はいない。 ・魔導士にも種類があり、手魔師といって自らの手から想像力で魔法を生み出せる者、物魔師といってこの国に数冊しかない魔導書通りにやらないと魔法が発動しない者、無魔師といって無意識に魔法を発動させてしまい、恐れられる者がいる。大まかに分けると、手魔師は王族に多い。物魔師は平民に多く、無魔師はこの国に数えるほどもいないが、この国には魔風と呼ばれる魔力を帯びた風が満ちていて、個人差で浴びすぎてしまい、魔力が暴発し、最終的に死に至る人のことらしい(つまりはアレルギーということか)。無魔師たちは暴発しない他の安全な惑星で暮らしている。 ・魔法の種類は主に星、月、風、火、闇からくる。星魔法は移動ものが多い。月魔法は光もの。風魔法は奇跡を生み出すが、使える者は少なく実態は明らかでない。火魔法は太陽の出ないこの国で暖をとるもの(太陽の出ない理由は解明されていなかった)。闇魔法についても、使える者は無魔師しかいないことから、はっきりとした記録はない。 ・魔法をなにか物体にかけることは出来るが、せいぜい移動させる、光を集める、燃やすが限度で、物体から人に魔法をかけることは出来ない。 ・魔法を使うときは、ただ単にこうしたいと祈ればいいだけだ。もし、何か物に発動させるときは、物に対して念を込めながら祈ればいい。 「……っと、こんな感じかな?」 大抵の基礎はこうしてまとめた。もし、人と魔法の話になっても話を合わせることくらいは出来るだろう。だが、最も重要な問題がある。 「さて~? リファータちゃんは何魔法の子なのかな~?」 もし、リファータが魔法を使える少女だったとするならば、話すとき苦労するだろうというこれからについての心配が二割。自分も魔法を使えるのではという淡い期待が八割。まとめるためのノートを探すため、彼女の部屋を見て回ったが、魔法関連の物は全くなかった。もしかすると彼女は手魔師なのかもしれない。リファータの身体は変わっていないのだし、魔法が使えるのではないか? 確信はないが、とりあえず一通り試してみる価値はあるだろう。 「ぜんっぜん駄目だー!!」 全く無理だった。ベッドに移動したい、手元を明るくしたい、元の世界に戻りたい、暖を取りたい。何を願っても叶わず、恥ずかしいだけだった。リファータが物魔師だった可能性もまだ残ってはいるが、もしかしたら見た目はリファータなのに身体的能力は梨波のままなのかもしれない。 「もともと地球人の私には魔力なんて備わってないってことなのね、はいはいわかりましたよもう!」 そういってベッドに入り、今までやってきたこと全部を忘れようとしたとき、少し胸のあたりがちくりと傷んだ、気がした。 それに気付かないふりをして、彼女は目を瞑った。
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