一日目

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次起きたときは十九時だった。ベッドに入って既に七時間過ぎていた。最初、昼食もせず、眠り続けていた自分に呆れていたものの、この世界に飛ばされる直前、地球は夕方だったのが、この世界に来たときには既に朝。もしかしたらその間全く寝ていなかったのかもしれない。そう考えることにした。 しばらくして遠慮がちなノックの音とともに、「入りますよ……?」と言い、使用人らしき女性が入って来た。先程の男性とは打って変わって、少し気の弱そうな女性だった。 「あ、良かった、起きていらっしゃる……」彼女はそう呟いて、そろそろ晩餐だが、今夜は奥様主催のパーティーだ、着ていく服はどうするかと聞いてきた。その様子から、きっと彼女は梨波をお昼も起こしに来てくれていたのだろうと察する。 「ああ、ごめんなさい、ちょっと疲れちゃってて…… 心配かけちゃったかな?」 「いえいえ、気にしないで下さい! それともどうします? 疲れているのなら、このままお休みに……」 「いやいや大丈夫! もうすっかり元気だよ! 何着ようかなって考えてただけ」 彼女は何にいたしますか? と、クローゼットを開けた。 「――っ!」 思わず目を見開く。女性それに気付かず、ドレスを次々と出していく。 そこにあったのは膨大な量のドレスだった。赤、青、白といった色に限らず、何色と呼ぶのかわからないような色など、まさに王室のクローゼットの中といった体だった。中にドレスしかないこと、他にもクローゼットがあることから、もしかしたらこれはドレス専用なのかもしれない。 「今夜は何度も申し上げる通り、奥様主催のパーティーですので、このような伝統的なお色を使ったのものなどがよろしいかと……」 「な、なるほど」 正直、梨波はドレスを着られるというだけで浮足立っていた。一体日本のどこで、ドレスを着るようなパーティーをしているだろう。が、しかし、これほどの量とは思っていなかったため、全て着てみたいという欲求に駆られた。何が伝統的で、何が流行ものだとかはさっぱりだったが、とにかく全てが素敵に見えた。 「うーんと…… あ、これ良いな」 女性が出したなかでも一番目を引かれたもの。紺碧のドレスに煌びやかな金や銀、銅色の星がちりばめられている。 「うふふ、お嬢様は伝統的、と言いますといつもこれをお選びになりますよね」 ──え、そうなの? 「どうか致しました?」 「いいえ!? なんでもないです!」 びっくりした。まさかリファータがここまで自分と同じような子だったとは…… 最早何かの運命すら感じてきた。 「では、ドレスも決まったことですし、湯あみの準備に入りますね。準備が出来ましたらお呼びするので、それまでお待ちください」 そういうと彼女は出て行った。 「……ゆあみ? って何?」
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