圭太とちいちゃんの楽しい調理実習の巻

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 ちいちゃんは先程から圭太が頻りに目配せするのをそっぽを向きながらもちらちらと見ていたので圭太が亦、図に乗って何を言い出すのかと興味津々になると体をピタッと止めて、「えっ、何を?」 「さっき、角谷がさあ、僕のお尻に目を向けてる時、如何にも見たい気ありげに眼をキラキラ輝かせるのを僕は見てしまったのだ!僕、そん時、どきっとしたよ!」  圭太がにやにやしながら発した言葉にちいちゃんは何か期するものが有ったと見え、静かに気合いを入れると意を決して言った。 「良原君、ちょっと顔を私の正面に向けてみて!」 「えっ、キスするの?」 「違うってば!もう!こんなとこでする訳ないでしょ!」 「じゃあ、他ならするの?」 「もう!良原君!余計なこと言わないで良いから兎に角、こっちに顔を向けてみて!」 「あ、ああ、分かった。」  圭太は只ならぬ気配を感じつつちいちゃんと真正面に向かい合う。 「これで遣り易くなったわ。」 「ああ、キスが?」と圭太が亦、恍けて聞いて彼の口が半開きになった所で、ちいちゃんはここぞとばかり、「良原君、好い加減にしなさいよ!」と言うなり右手で圭太の下唇を摘まんで、きつくぎゅっと引っ張った。 「いってえ!いててててて!何すんだよ、角谷!手、放せよ!」 「放して欲しかったら出鱈目の嘘は言わないって誓って!」 「ああ、分かった、分かった、誓うよ!だから、早く、早く、放してよ!」  圭太は下唇を引っ張られた状態で喋っている訳だから当然、面白い顔になっていたが、ちいちゃんは気合い其の儘に笑いもせず、つんと澄ましながら手を離した。が、「おお、いて、酷いじゃないか!今度のは特別、痛かったぞ!僕の下唇、いかりや長介みたいになってないか!」と圭太が冗談を言うと、ちいちゃんはつんつん顔を忽ち破顔にして声を立てて笑い出した。が、それは束の間の事で、ちいちゃん、これではいけないと笑いたいのを堪えると、気合を入れ直し、「なる訳ないでしょ!良原君ねえ、ほんとだったらねえ、私、閻魔様に代わって舌を引っこ抜く所よ!」
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