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「おー、こわ、角谷って、いざとなると凄いこと考えるんだねえ。」
「だって良原君ったら私が再三、女の子はデリケートなんだから気を付けてって言ってるのにデリカシーに欠ける事ばっかり言ってるからよ!」
「ああ、ごめん、いや、あの、角谷の眼があんまりキラキラしてるもんで遂、勘違いして言っちゃったのかもしれないな。」
この発言にちいちゃんは早くも気合が萎えて顔を緩ませ、凛々しさを失い、「またあ・・・良原君ったら・・・旨く誤魔化しちゃって・・・」
「いや、角谷の眼がキラキラしてるのは確かだよ。」
「もう、良原君ったら、ほんとに調子良いんだから・・・」
ちいちゃんは圭太の褒め言葉に少なからず自惚れたものの圭太の口から再三、出て来るキラキラという言葉に衷心で思うものが有ったと見えて顔に紅葉を散らす。
「ああ、どうしたんだい?ほっぺの辺が赤くなってるよ!」
「えっ?私?」
「何、恍けちゃってるんだよ。角谷に決まってるじゃないか!ははあん、そうやって恍ける所を見ると、角谷!何か隠してるだろ!」
「えっ?私が?」
「うん。でも、ほとんど無意識に隠してるから隠してるとは思ってないだろうけどね。」
「えー!?」
「でも何となく隠してるものが意識されて、こそばゆくなって、それで赤くなったんだと思うんだけど、角谷!隠してるものが何だか知りたいかい!」
「えっ、私が隠してるもの?」
「うん。」
「んー、知りたい様な知りたくない様な、何か怖いけど知りたい!」
「でもさあ、それを明かすと誓いを破った事にされるから言わないでおこ。」
「えー!いいから言いなさいよ!私、勿体振る人、嫌いよ!」
「いやいや、そう言われてもこれを言うと怒るから言えない。僕はこういう事に関しては女の子がデリケートな事が分かってるし、中でも角谷が過敏に反応する事が分かってるから。」
「えー!いいから言いなさいよ。気になるじゃない・・・」
「まあ、いいから、角谷も言ってただろ。時間が限られてるんだから、さあ、始めようぜ!」
圭太はそう言って今更ながら急いで俎板に向かうと生まれて初めて、やっとこさ、包丁を握った。「うわあ、いざ持ってみると怖いなあ。僕、出来るかなあ。」
圭太がそう言っても、ちいちゃんは圭太が自分の衷心の真相を隠し持っている気がして気になって圭太をコーチしようとせず、只、ぼんやり見ている。
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