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圭太の口を衝いて出る言葉はセクハラと訴えられ、それに対して異議あり!と文句を付ける親爺みたいに愈々子供らしくなくなって来た。
「まあ、これ以上、突っ込んで言うとデリケートな乙女の心を穏やかならぬものにして仕舞には亦、怒られる破目になって、それこそ誓いを破った事にされるから、この話はこれ位にして・・・」と圭太は言葉通り恐れながら切り上げると殊更に包丁を掲げて閃光を見つめ、「今宵の虎徹は血に飢えておるわ、なんちって。あっ、そうそう、これ、包丁だったんだ。」と態とらしく茶化してから呼び掛けた。「さ~てと角谷!時間が限られてるんだから早く始めようぜ!」
ちいちゃんは先程の気焔を上げた圭太の話を聞いていて自分の事を言われている様な気がしていたので圭太の呼び掛けに何だか、ほっとして、「そ、そうね。」と返事をして、「そろそろ始めましょっか。」と言うと、ちょっぴり恐れつつ圭太に近寄る。
「うん、始めよ。」
「じゃあ、えーと。」とちいちゃんは言いながら水切り笊の中から新玉葱を取り出して圭太に渡すと圭太をコーチし出した。「まず玉葱を根と芽が左右に来る様に俎板に置いてみて!」
「はいよ!」
「そしたら玉葱が転がらない様にしっかり左手で持ってみて。」
「はいよ。」
「そしたら刃をまず芽の所に当ててみて。」
「はいよ。」
「そしたら、ちょっと押し込んでみて。」
「はいよ、あっ、切れた。」
「それで大体、どの位の力を入れれば、切れるか、分かったでしょ。」
「うん、分かった。」
「じゃあ、その感覚で押し込んでみて。」
「はいよ、あっ、落ちた。」
「そしたら、同じ様に根も切り落としてみて。」
「よし、来た!えーと、玉葱を回しましてーと、根の所に当てましてーと、切り込みましてーと、あっ、出来た。」
「やって見れば簡単でしょ。」
「うん、簡単簡単。角谷が教えてくれたから、てきぱき出来ちゃった。」
「そうでしょう。」
「うん。」
「じゃあねえ、今度は玉葱を縦半分に切るから代わってみて。」
「はーい!」
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