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二人はいそいそと入れ替わり、ちいちゃんが包丁を右手に取り、自分が芽と根を切り落とした新玉葱を左手に取り、見本を見せる体勢に入った。「まず切り口を下にして置くの。これなら安定するでしょ。」
「うん。」
「それで左手の指を曲げてこうして玉葱に爪を当てる感じで玉葱を押さえるの。何でかって言うと指先を過って切り付けない様にする為なの。」
「ああ、血い見ない為だね。」
「あっ?ああ、そうそう。そして、こうやって真ん中に刃を当てて、さっきの要領で切り込んで、それから力を入れてスパッと切り裂くの。ね、割れたでしょ、やってみて。」
「はーい!」
二人はいそいそと入れ替わり、圭太が包丁を右手に取り、自分が芽と根を切り落とした新玉葱を左手に取り、ちいちゃんの見本に倣う体勢に入った。「えーと、切り口を下に置きましてーと、爪を当てる感じで押さえましてーと、真ん中に刃を当てましてーと。」
「そこから押して切れ目が入ったら、ぐっと力を入れて押し込むの。」
「よーし。少し押しましてーと、成程、よーし、押し込むぞ」と圭太は言いしな態と包丁の刃を傾けて、「あっ、滑った!」と言いながら体をちいちゃんの方へよろめく様に傾けた。
果たせる哉、ちいちゃんが慌てて、「あっ、危ない!」と言って自分の体を支えようと自分の両腋の下に手を宛がったので圭太はしめしめと思い、こう言った。
「そうだよ、そうやってコーチしてくれなきゃ駄目だよ。」
すると、ちいちゃんは即刻、手を離し、目元口元に笑みを湛えながらも、「もう呆れた。」と呟くや、「何が滑ったよ!態とよろけたんでしょ!」と叫んだ。
「いや、違うよ。ほんとに玉葱の上で包丁が滑ったもんだから、よろけたんだよ。」
「嘘おっしゃい!ほんとに、やらしいんだから・・・」
「へへへ、ばれたか。」と圭太は言うなり姿勢を正して俎板に向き直り、包丁の刃先を先程、切り付けた所に当てた途端、にやにやしていた顔を引き締めると、ちいちゃんが圭太の手元を見守り出した。
「こっから力を入れて・・・おっ、割れた。一刀両断!」
「出来たじゃないの。簡単でしょ。」
「いや、簡玉だ。」
「かんたま?」
「あっ、間違えた、金単だ。」
「きんたん?」
「違うって、金玉!」
「きんた・・・ちょっと、良原君!」
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