序章

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 斯かる負のスパイラルに陥る境遇にある圭太は、醜い等の理由で皆から差別扱いされている弱い立場の者は別としても器量の良い女子生徒以外の者には嫌そうに応対する事に成り勝ちになるのであるが、或る日の家庭科の授業でクラスの生徒が男子三人女子三人の六人ずつ六班に分かれて野菜サラダの調理実習に臨んだ時も器量の良い女子生徒にしか好ましく応対出来ない圭太の人間関係がはっきり表れた。その図式を表すと圭太が入った班の男子の内の一人は人気が有って勉強も運動も出来る優秀な生徒だったが、圭太は普段からこの優秀君の不遜な態度が気に食わなかったし、当然、彼にも冷遇されていたし、この授業中も同様なので優秀君に嫌そうに応対した。もう一人は圭太を苛めていた生徒だったが、独りでは何も出来ない様な卑怯者で班の中に仲間がいなかったからこの授業中の間は、先生の目を盗んでは仲間と一緒に圭太を苛める普段の姿は影を潜め、先生が見ていない時でも圭太に手はおろか口を出す事すら出来なかった。圭太はそんな卑怯者を助かりながらも軽蔑したので、この授業中も卑怯者に嫌そうに応対した。一方、女子の中には可愛くて賢くて「ちいちゃん」という愛称で女子の間で親しまれていた女子生徒がいたが、後の二人は容貌が芳しくなかったので、この授業が始まってから圭太はちいちゃんだけが気になって結局、ちいちゃんにべったりという事になった。では圭太がちいちゃんにべったりになった顛末を次の章にしたためるとしよう。
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