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「何、亦、沈んでんのよ!そんな風だから苛められるのよ!」
「いや、阿川がそんな風にさせてるんじゃないか!」
「あたしの所為で苛められてるって言うの!」
「違うって・・・」と圭太は言葉に窮し、何でこう来るかなあと思う。
「変な言い掛かりよしてよ!」
「あのねえ・・・」それはこっちの台詞だよと思う。
「全く、もう、お嬢様のあたしを悪者にするなんて、どういう積もりなのよ!」
「い、いや、どういう積もりって君がどういう積もりなんだよ。」
「何よ!お嬢様のあたしに楯突く気!」
「い、いや・・・」と圭太は再び言葉に窮して俯いてしまい、心中で、「亦、お嬢様か・・・二言目にはお嬢様だよ。此の娘、いつもお嬢様である事を鼻にかけてるけど男だったら絶対、僕を精神的にだけじゃなくて肉体的にも痛めつけるに違いない。」と恐れ、猶も俯いていると、「あのねえ、良原君、そんな風に黙ってないで、しっかり、あたしの方を向いて、あたしの言う事にちゃんとした格好で、ちゃんと答えてよ!」と阿川さんが要求した。なので嬉しい様な恐ろしい様な心持で、「あ、ああ。」と答えて顔を上げ、阿川さんに用心しながら体を向ける。
「あのねえ、言っておくけど、あたしの名前の智妃路(ちひろ)の妃(ひ)は妃(きさき)様って意味なの。そこんとこ分かってんの?」
「ああ、前にも聞いたよ。」
「じゃあ、何で妃様のあたしに楯突くのよ!」
「い、いや、だから何なんだよ、その理屈・・・」
「何よ!良原君!文句あるの?亦、楯突く気!」
「い、いや・・・」と圭太が怯んだ所で阿川さんは自分の優位性をはっきり示そうと、まずはお人形さんの様な目をぎらっと光らせて、「ねえ、良原君!」
「う、うん。」と圭太は答え、縮こまる。
「あなたのお父さんは会社で何かの役職に就いてたかしらねえ。」
「ああ、班長という役職に就いてるよ。」
「亦、班長ってもう!分かってないんだから・・・」
阿川さんはそう言うが、自分が分かっていないからそう言うのである。その証拠に、「あのねえ、改めて聞くけど会社に通学班って有る?」と頓馬な事を聞く。
圭太は失笑しながら、「無いだろうねえ。」
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