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圭太の意外な反応に、「そ、そうよ。」とちいちゃんが怪訝そうに答えると圭太はにやりとして呟いた。
「ブタさんかと思った。」
圭太が独りで受けて、くすくす笑っている内に、ちいちゃんは恥ずかしいやら頭に来るやらで顔を赤らめながら頭に血が上って鬼の形相になって行き、謂わば赤鬼顔となった所で圭太のほっぺを思いっ切り抓った。
「いってえ!」
圭太がそう叫んで顔を歪ませて酷く痛がると、ちいちゃんは抓るのを止めて赤鬼顔を幾分、綻ばせたものの、「良原君(圭太)!勿論、冗談よね!」と鋭く迫った。
圭太はちいちゃんの延いては女の子の癇に障ってしまったのを肌で感じ取り、「も、勿論だよ。冗談に決まってるじゃないか。怒らないでよ。」と顔を引き攣らせ、ほっぺを摩り、後退りしながら答えた。それでも、「そりゃあ、怒るわよ!冗談にも程が有るわよ!私、一生懸命、縫ったんだから!」とちいちゃんが猶もいきり立って迫って来るので圭太は、これはちょっと不味かったかなあと反省して、「あ、ああ、そうだったのか、ほんとに悪かった。ほんとにごめんよ。」と甚だ弱り切って謝った。
すると、ちいちゃんはふふふと含み笑いをして、「すっかり困っちゃって。変な冗談言うからよ。」と言って顔中を綻ばせた。
圭太は自ら仕掛けたのに何やらちいちゃんに遣り込められた結果になってしまったので負け惜しみで、「アハハハ!」と笑って見せたものの、まだ何処となく顔を引き攣らせていると、ちいちゃんが熊の刺繍を指差しながら、「ど~お、改めて見て?」と質して来た。なので、もう、ちいちゃんの機嫌を損ねない様にしようと思って捲土重来を期して熊の真似をした積もりが、何故か腹鼓を打ちながら、「勿論、百パーセント可愛いクマちゃんにしか見えないよ!」と言うと、ちいちゃんが笑いながら、「良原君、それじゃあタヌキさんじゃないの!」と言うので、「あっ、そっか、間違えた、アハハハ!」と照れ隠しに笑った後、今度は胸を叩きながら、「勿論、百パーセント可愛いクマちゃんにしか見えないよ!」と言うと、ちいちゃんが亦、笑いながら、「良原君、それじゃあゴリラさんじゃないの!」と言うので、「えっ、クマって立ち上って・・・あっ、そっか、立ち上がるだけで胸は叩かないか、こら亦、したり、アハハハ!」と再び照れ隠しに笑った後、一寸考えてから今度は凝りに凝って遡上する鮭を捕る熊の真似をしながら、「勿論、百パーセント可愛いクマちゃんにしか見えないよ!」と言った。
すると、ちいちゃんは圭太の物真似がひょっとこ被りの酔っ払いが安木節に合わせて踊る泥鰌掬いに見えなくも無かったが、圭太の努力に免じて熊と認め、如何にも満足そうに可笑しそうに聞いた。
「ほんとうにそう思ってるの?」
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