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「やってみてったって僕、包丁、持つの、初めてなんだよ。」
「初めてだろうが何だろうがやってみるしかないじゃないの。」
「まあ、そうなんだけどさあ、角谷がしっかりコーチしてくれないと僕、指、切るかもしれないよ。」
「まあ!そんな怖いこと言って!」
「だって、角谷がねえ、ちゃんとコーチしてくれないとほんとに血い見る事になるよ。」
「分かったから怖いこと言ってないで早く包丁、持ちなさいよ。でないとコーチ出来ないでしょ!」
「だってさあ、教えてあげるって言ってたのにいきなり、やってみてって言うからさあ、えっ!って思っちゃったんだよ。」
「ああ、ごめんね、言い方が悪かったのね。じゃあ、まず包丁を持ってみて、とでも言えば良かったの?」
「いやいや、そうじゃなくて最初から手取り足取りって感じでさあ、まず僕の手を取って、包丁はね、こうやって握ってねってやって欲しかったんだよ。そしたら角谷ってやっぱり優しいなって思うじゃない。」
「まあ、やらしい!良原君ったら、そんなこと期待してたの!」と言いながらも、ちいちゃんの方で目を爛々と輝かせる。
「だってさあ、そうするとさあ、角谷の手がさあ、僕の手に」と圭太が調子に乗って身振り手振りを交えて喋っている隙に、ちいちゃんはいそいそと圭太の背後に回って圭太の尻を思いっ切り抓った。
「いってえ!」
圭太がそう叫んで体を捩らせながら痛がると、ちいちゃんは吹き出しながら、「良原君、あんまり我儘言ってると教えてあげないわよ!」
「我儘か知らないけど酷いじゃないか!いったいよ!」
圭太はそう言いながらも嬉しそうである。
「だって良原君ったら、やらしいんだもん。」
ちいちゃんもそう言いながらも嬉しそうである。
「やらしいとかやらしくないとかじゃないよ。僕、初心者なんだから、丁寧に教えてって言ってるだけだよ。」
「あのねえ、良原君、包丁なんて普通に持てば、それで良いの。時間が限られてるんだから早く持ちなさいよ!」
「まあ、持つけどさあ、僕さあ、今日、角谷の所為で三ヶ所も痣が出来ちゃったよ。」
「抓ったぐらいで痣なんて出来っこないでしょう。」
「じゃあ、見てみる。」
圭太がそう言って、にやりとしてちいちゃんを一瞥した後、ちいちゃんに背を向け、密かに半ズボンのボタンを外しチャックを半分位、下ろした所で勘付いたちいちゃんは、「きゃー!やだー!」と悲鳴を上げるや否や、「良原君!何してんのよ!」と叫ぶと同時に圭太の尻を力任せに平手で撲った。
「いってえ!もう、やだー!」
圭太がそう叫んで尻を摩りながら痛がると、ちいちゃんは撲った際、ピシャン!と物の見事に良い音がしたのも手伝って、「アハハハ!」と大笑いして、「もう、良原君、ほっぺだけ見れば分かるの。何で態々ズボンを脱ごうとするのよ!」
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