序章

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序章

 人間は好悪に個人差は有れど視覚的に美しい者を好み醜い者を嫌う事に変わりはない。差別的だ。にも拘らず醜い者を差別する者を非難する事は偽善だ。但し、醜い者に対し嫌悪感を抱く事から免れられなくても理性を働かせて傷心させないようにあからさまに嫌う態度を表さない者がそうする事は偽善には相当しないし、斯様な奇特な者が心も見た目も美しい者を好み欲し求める事は、実に望ましい事だ。何故なら美しい、それ自体が善なのだからとこんな難しそうな事を小学五年生にして大体、悟った麒麟児たる圭太は、生まれつき感性豊かで繊細で傷つき易くて正義感の強い性格で、それでいて大人顔負けの穿った見方をして而もそれを口に出してしまう稀有な存在であった。これ程までに貴重な人間は仮令、美しくとも明治維新以来、近代化を図りながら西洋の個人主義を利己主義の様に間違って受け止め、受け入れられなかった為に相も変わらず集団主義若しくは全体主義で村社会から脱し得ない日本のその子供社会に於いても出る杭は打たれるで皆から憎まれたり、邪魔にされたり、妬まれたり、煙たがられたり、敬遠されたり、生意気に見られたり、苛めっ子に苛められたりするので暗くなる事が多くなるのである。而も互いにフレンドリーに接している時でも相手に幻滅して価値を見出せなくなり虚無的になるので更に暗くなる事が多くなるのである。おまけに根っからの可愛子ちゃん好きで口が達者で先天的に象牙をも欺く色白の美少年と来ているから可愛い女子生徒と如才なく親しむ事が仇となり、往々にして苛めっ子の反感や嫉妬を買い、苛めっ子に苛められるので更に暗くなる事が多くなるのである。糅てて加えて折しも日本では見た目が明るい者が優遇され、見た目が暗い者が冷遇される傾向が強まって行く時勢(1980年頃)にあった所為で苛めっ子に苛められるので更に暗くなる事が多くなるのである。
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