圭太、早朝、教室で美少女且つお嬢様の阿川さんとおしゃべりの巻

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圭太、早朝、教室で美少女且つお嬢様の阿川さんとおしゃべりの巻

 翌朝、圭太はいつもより早い時間に登校して教室に入り、隣の席の阿川さんという女子生徒に挨拶をしてからランドセルをよっこらしょと机の上に置き、席に着いて教材をランドセルから机の中に移し入れていると、阿川さんが不気味な笑みを湛えつつ体を彼に向けた。この子はちいちゃんには一籌を輸するものの目鼻立ちのはっきりした中々の美少女だったのだが、いいとこのお嬢さんで気位が高く而も物凄く我儘で生意気できつい性格をしていたので流石の可愛子ちゃん好きの圭太も応対にいつもたじろぎがちだった。殊にこの日はたじたじになるのであるが、「良原君、約束通り来ちゃったわね!」と阿川さんが挑んで来る様に言うと圭太は思わず手を休め、東の窓から差し込んで来る朝日を背後から浴びて出来た影と窓ガラスに反射する光とで不穏なコントラストを表した彼女の顔に彼女の陰と朝日とで不安なグラデーションを表した顔を向け、「ああ、何か、色々僕に言いたい事が有るって言ってたから、つい来ちゃったんだけど・・・」 「『つい来ちゃった』って何よ!」 「い、いや・・・」と圭太は早速、たじろぐ。 「あのねえ、良原君。」 「ああ。」 「あなたのねえ、あたしに対するそういう普段の言い回しとか態度とか、その何もかもぜ~んぶが、悉く気に食わないから、あたしがあなたに色々言う事が出来ちゃうのよ!」 「ああ、そうなの。」 「亦、『ああ、そうなの。』って何なの、その間の抜けた受け答えわ!もうちょっと、歯切れよく元気よく答えなさいよ!ったく、あたしにはそんな風なのに昨日の調理実習の時間は、何だか、えらい、はしゃいでたじゃないの!」 「いや、まあ、ヒヒヒヒ。」と思い出し笑いをする。 「あたしには暗い癖に・・・」と阿川さんが不満そうに言いながら、お人形さんの様な目で圭太をじっと睨みつけると、「ああ、まあ・・・」と圭太は一転しゅんとする。 「何よ!悄気ちゃって!何であたしにはそんな風なのよ!」 「いや、だって・・・」と圭太は口籠り、そんな風にもなるよと思う。 「だって何よ!」 「いや・・・」と圭太は返答に困って亦、口籠る。 「何で、そんな沈んじゃってんのよ。あたしと喋れて嬉しい癖に・・・ほんとにもう!もうちょっと素直になって笑顔でいなさいよ。」と阿川さんは並大抵でない自惚れ心から我が儘な要求をすると圭太が是非に及ばず無理矢理笑顔を作ったのを見て、「そうよ、それで良いのよ。」と満足げに言う。  笑ってれば嬉しがってると思ったら大間違いだぞ!もうちょっと人の心を読めれんのか!上滑りだなあ・・・こんなんだから俗物は作り笑顔を強要し良しとする訳かと圭太は早熟にも悟り虚しそうな表情を見せる。
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