Dummy Honey Ⅱ/*A

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分かってないな。 全然分かってない。 根本的に優しさの遣い方が間違ってるんだよ。 「何が不満なんだよ。」 「全部だよ。」 「んだと!?俺が気にかけてやってるのにとんだ女だな。他の女だったらあんあん啼いてるぞ。」 「完全に気にかけてるというか喰ってるよねそれ。そもそもあんたがいなければ私は今頃夢月と結ばれてたのよ。だから気を遣うなら私と関わるなあと問題起こすな。」 「……なぁ、ちょっといいか。」 「何!?」 人の話聞いてたかこの野郎。 私の髪をそっと掬い取って耳に掛けた肉欲獣が、端正な顔を近づけた。 「可愛いお前見てるとムラムラした。ヤらせてくれ。」 「切り替わるの急過ぎだろ消えて。」 いつ何処で性欲スイッチ入ったの。 馬鹿すぎて分からない。 胸元へと伸びてくる手を掴んで思い切りベッドの下に投げ捨てた。 「ぐはっ……くっそ……とんだアマだ…マジで痛ぇ。」 「金輪際、私と関わらないで。まず二度と花咲学園の敷居を跨ぐな。それだけで夢月と私は上手くいくんだから。」 もう無理。 これ以上関わったら碌な事がない。 「私は授業に戻るから。あんたもさっさと帰ってよ。」 ベッドから降りて、床に這いつくばっている肉欲獣を置いて扉に手を掛けた。 「お前、辛そうなんだよ。息苦しくなったらいつでも大声で叫べ。すぐ行く。」 「だから迷惑だって言ってるでしょ。」 どうしてここまでこの男が踏み込んでくるのか分からない。 きっと、ただの暇潰しなのだろう。 私の弱味を握って、面白がって、遊んでいるに違いない。 くそ、今までの人生誰にも悟られず生きてきた本性をこんな奴に露呈するなんてついていない。 でも流石に、ここまで言えばわざわざ絡みに来る事もないだろう。 土足で踏み込んで、私の心をぐちゃぐちゃに搔き乱す前にさっさと飽きて欲しい。 「マカロン、お前は良い女だ。」 扉が閉まる寸前、背後から聞こえたその声に鼓動が反応する。 「だから……真白だって言ってるじゃん。」 私の呟きは、長く続く廊下に消えて行った。
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