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一章
ーー家に帰ると、部屋の中が真っ暗だった。
「あれ、おかしいな…」
葵はいないのかと思ってリビングの灯りを点けると、
そこにはソファーに頭を抱えてうずくまる葵の姿があった。
「……どうした? 葵…」
そばに寄り、隣に腰を下ろし声をかけると、びくりと顔を上げた。
「……シノッ…シノ……」
呼んで、胸にしがみついてくるのを、
「……どうしたのか、言えって…」
片腕に腰を抱え耳元へ言うと、
「…………誰か、人が……人が部屋に入って来て……俺を、襲おうと…手、手が…たくさんの手に……また、犯される……恐い…いや…だっ……」
俺のワイシャツに顔をうずめ、肩を震わせ嗚咽を漏らすのを、
「……葵……大丈夫だ。誰もいない……」
その髪をぐしゃっと鷲掴んで、
「ほら、目開けて見てみろ……誰も、部屋にはいないから」
頭を上げさせる。
「…………いない? 誰も……?」
「いない……、」伝えて、
「俺以外に誰もいないから、安心しろ」
上げさせた頭を、手で何度も撫でた。
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