三章

44/44
671人が本棚に入れています
本棚に追加
/270ページ
焼き上がったケーキを切り分けて、テーブルに向かい合い座った。 ブランデー紅茶を飲みながら食べると、あまり甘くないココアケーキも美味しく感じられた。 「葵、これ意外とうまいな…」 「シノ…ねぇ、ケーキ味のキス……したい…」 「……なんだよ、それは…」 「…ん」と軽く突き出された唇を見つめて、 「……そういうこと、すんな……めちゃくちゃ照れんだろう……」 言いながらも、テーブルを挟んでちゅっと口づけた。 ……ケーキを食べてはキスをして、紅茶を飲んで口の中を潤すと、また唇を重ね合って、 休みの日の午後は、そんな風に緩やかに甘ったるく過ぎて、 葵が身体の内に抱えている辛さを、これからもこんな風にして甘く包んでも行けたらいいなと感じていた……。
/270ページ

最初のコメントを投稿しよう!