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名前を訊かれてその顔を窺って見たが、覚えなどはないようだった。
「……誰ですか……どうして俺の名を……」
怪訝に感じ聞き返すと、
「誰でもいいじゃないですか…」
と、その男はニィッと笑い、
「いいものを差し上げますんで」
声をひそめるようにして、手の中に何かを握らせた。
「……興味があれば、いつでも連絡してください」
それだけを言い、こちらから何かを問う間もなくスッと俺から離れて行った。
何を握らせたんだ……と、手を開いて見ると、
そこには、小さなビニール袋と携帯の連絡先だけが書かれたメモがあった。
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