四章

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名前を訊かれてその顔を窺って見たが、覚えなどはないようだった。 「……誰ですか……どうして俺の名を……」 怪訝に感じ聞き返すと、 「誰でもいいじゃないですか…」 と、その男はニィッと笑い、 「いいものを差し上げますんで」 声をひそめるようにして、手の中に何かを握らせた。 「……興味があれば、いつでも連絡してください」 それだけを言い、こちらから何かを問う間もなくスッと俺から離れて行った。 何を握らせたんだ……と、手を開いて見ると、 そこには、小さなビニール袋と携帯の連絡先だけが書かれたメモがあった。
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