三章

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「……寝ていた? 俺が、ずっと…?」 だったら、ドラッグを打っていた方が夢だったんだろうかとも思いながら、すぐには自分の中で判断が付けられずに、 「……クスリ、俺はクスリを打ったのか?」 と、ぼんやりとしたまま呟いた。 「…………おまえ、何を言ってる……」 篠崎が起き上がり、寝ている俺の両肩をぐっと鷲掴んだ。 「……えっ…」 なんで巽じゃない顔が目の前にあるんだ……と感じる。 意識がはっきりせず、今の自分の状況が咄嗟に理解できなかった。 「……葵、ちゃんと目を開けて現状を見ろ……」 「……現状……?」 朦朧とするぼやけた視界の中で、篠崎の顔に巽の顔が重なって見えた。 「あっ……巽……ねぇ、俺を……抱いて……気持ちよくさせて……」 「……葵っ!!」 泣き叫ぶような声が聞こえ、 「……はっ?」 と、我に返った。
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