三章

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「……葵……どうして……俺が、わからないのか? ……巽じゃない、シノだろう?」 自分の頬にぼたぼたと落ちる涙に、 「……シノ……?」 と、目を上げて見つめた。 「そうだ…シノだ……わかるよな? 葵…」 今まで自分がどうしていたのかもわからず、 「……なんで泣いてるんだ……シノ?」 と、尋ねた。 「……なんでもない」 シノが涙を拭って、 「なんでもない……おまえが覚めてくれたのなら、なんでもないから……」 ぎゅっと俺の身体に腕を回し抱きついてくるのに、 「……重たい…シノ…」 まだどこか呆然として口にすると、 「……ごめんな……重かったよな…」 と、のしかかっていた俺の身体の上からどいて、それから、 「……おまえ、熱があるだろう……顔が熱い」と、額に手をあてた。
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