三章

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ベッドに一人取り残されて、見ていた夢をもう一度思い起こそうとして、 …………俺が見ていた夢は、まさか……と、ふいに気づくと、 「うっ…うああぁぁ……」声にならない声が喉を迸った。 「どうした、葵っ!」 篠崎が駆け戻って来て、顔を見下ろす。 「……シノ…シノ…俺は、俺はまたクスリをっ……」 真上にある服を両手で必死に掴んだ。 「……違うっ! 葵! 夢だ、それは! しっかりしろ…な?」 服を握り締める俺の手を(ほど)き、自分の手に堅く握って涙声で言い聞かせる。 「……夢? いや、俺はまたドラッグを……」 「……違う、違うから……熱で悪い夢を見ただけだ……だから、大丈夫だ…葵…」 身体がきつく抱えられて、「……心配すんな…今、熱を冷ましてやるから……」手の平で前髪が掻き上げられ、氷の詰まった氷嚢が乗せられた。
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