三章

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……氷嚢があたると、熱は確かにあったらしく体温がすーっと下がって行くのが感じられた。 「……葵、大丈夫だ。……だから、少し休め」 頭を撫でて、シノが言う。 「……シノ……ごめん…」 「……なんで、謝る? おまえは、なんにもしてない……クスリなんて、やってはいないんだから」 「……ごめん…シノ……」 謝らずにいられない。そうしていないと、自分がたとえ夢だろうとクスリに再び手を出したことを正当化してしまいそうで、ただ恐ろしかった。 「だから謝らなくていい……。寝ろって……こうやって手握っていてやるから」 震えの走る手がぎゅっと握られて、 「けど、おまえこれから仕事だろ……」 今が朝なことに気づいて、握る手を離そうとすると、 「……いい、今日は休めるかどうか聞いてみるから。今は大きな事件も動いてないし、課長は融通をきかせてくれるはずだから」 手がまた包むように握り直された。
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