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四章
……食材を買いに出たついでに、ふらりと本屋に立ち寄った。
別に読みたい本があるわけでもなかったが、シノと住むようになってしばらくが過ぎて、少しずつだが他にも目を向けるゆとりが出てきているのを感じていた。
まだ恐怖感はあって一人での外出はたまにしかできなかったが、気持ちに余裕が生まれたことで徐々にだが周囲にも適応していけるように思えていた。
こんな風にゆっくりと本を見て回ることさえもうずっとなかったかもしれないと感じつつ、広い本屋のフロアを特に何を見るともなしに歩いていると、
立ち止まったところへ、ふと近寄ってくる人影があった。
すぐ側へ並んで立つのに、知ってる人だろうかと思い目を向けると、
「葵…蒼矢さん、ですよね? 」と、尋ねられた。
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