犬のおばさん

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祖母が味噌汁を飲みながら 実は今までも何度か店に来ているお客さんなのだと そんな大げさに騒がなくても、と 言いたげな様子で話し始めた。 いつもフリルがたくさんついた服を着て来て、 台車つきの買い物キャリーに 犬のぬいぐるみを入れて連れてくるのだと。 害がある感じはないし、毎回何かしら買ってくれるし いつも長時間おしゃべりして すっきりした顔をして帰って行くので 特に気にしていない、という事だった。 むしろ人を見た目で判断してはいけないと窘められ 祖母は別の話題を話し始めた。 祖母はそう言ったものの、 あの不気味なおばさんの見た目が頭から離れなくて その日はよく寝付けなかったのをよく覚えている。 私はその日からそのお客さんを「犬のおばさん」と名付けた。
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