図書館に棲む落ちこぼれの神様

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 やっぱり、何度見てもイケメンだった。そんな彼が奥手で根暗とは、どうにも考え難いのだが、でも、誰かと一緒にいるところを見たことはない。というか、図書館以外の場所で見たことがない。  ずっと、一日中ああやって本を読んでいるのだろう。どうして、そこから動かないのか。どうしていつも、一人で色んな本を読んでいるのか。考えれば考えるほど不思議だ。  寺本の親族なのだとすれば、家はこの近くなのだろうか。一体何時に図書館に来て、何時に帰るのだろうか。  思えば、あんなにイケメンなのに、噂にすらなっていないように思う。愛佳の友達ならば、すぐに食いつきそうなイケメンなのにだ。  ああ、もう、総ての原因はあのイケメンな顔だと、愛佳はそう思って勝手に腹を立てる。もうちょっと不細工ならば、声を掛けやすかっただろうと思う。あの人を寄せ付けさせない顔立ちこそ、孤独な原因ではないだろうか。 「いや、それは勝手な想像か」  イケメンだから孤独なのだとすれば、もう少し違う解決法がありそうだ。わざわざ叔父さんを使って、自分に声を掛けさせるように仕向ける必要はない。あの顔だったら、女子ならば笑いかけただけでイチコロではなかろうか。友達でも遊び仲間でも、あの顔を活かしてゲット出来そうである。 「ううん」  だから、さっさと声を掛ければ済むのだと、愛佳も解っている。解っているが、難しい。とりつく島がないように思える。
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