74人が本棚に入れています
本棚に追加
どうしようかなと、ベンチに座ってぼんやりとしてしまう。図書館はキャンパスの外れで、しかも大学の敷地の向こう側は京都御所だから、とても静かだ。街の喧騒も届かない。
「はあ」
おかげで、少し気持ちが落ち着いた。空を見上げると、三日月が浮かんでいるのが見える。しかし、星はそれほど見えない。やっぱり静かでも都会だなと、そんなことを思う。
「あ、奥山君」
そうやってぼんやりとしていたら、何と悩みの原因の寺本が通りかかった。そして笑顔でこちらに近づいてくる。愛佳は思わず飛び上がっていた。
「先生。その」
「ああ。静嵐とはまだ喋れていないのかな。ま、無理もないか。愛想ないだろ」
「え、ええ」
頷くのもどうかと一瞬思ったが、取り付く島もないのだから、頷くのが正解だろう。
「仕方ないんだけどね。どうにか、俺は他の人とも付き合うべきだと思うんだよね。このままは――本当に良くない」
「はあ」
そんなに心配なのかと、愛佳は首を傾げてしまう。今時、友達を作らない人だって珍しくないと思うのだが。というか、そういう人でもSNSには友達がいたりするし。
「あ、そうだ。これから図書館に入るんだけど、一緒にどう?」
「え、ええっ」
今、出てきたばかりなのに。それにちょっと気まずくなってるのにと、愛佳は驚く。
最初のコメントを投稿しよう!