74人が本棚に入れています
本棚に追加
「僕が間に入って、会話のきっかけを作るよ。どうやら奥山君にはずいぶんと悩ませてしまったようだからな」
「うっ」
そのとおりですと、愛佳は顔を赤らめる。あれこれと考え、何か会話のきっかけはないかと探ってみたものの、完璧なまでに隙がなかった。ついでに言えば、気安く声を掛けられるタイプでもなさそう。
先ほどの視線を考えれば、邪魔だと思っているのではないか。さっさとどっか行けと思っているのではないか。そう心配してしまう。
「ははっ。それならば僕に奥山君のことは言わないと思うけど?」
「うっ」
「静嵐がね。毎日のように戦国時代の本を読んでいる子がいるけど、お前のところの学生じゃないのかって」
「お、お前?」
叔父さんに向かってと、なぜかそこに驚いてしまう。そんな愛佳の反応に、寺本は苦笑する。どうやら驚いたポイントを勘違いされたらしい。
「へそ曲がりなんだ」
「は、はあ」
やはり、勘違いしている。愛佳はこの寺本のマイペースさに驚いていた。さすが、第一線で活躍する研究者と言うべきか。
「だからさ。君から声を掛けてくれるの、待ってると思うよ。彼は、自分では声を掛けられないんだ」
「え?」
「――へそ曲がりだからさ」
今度は、へそ曲がりというまでに僅かに間があった。それが、なぜか気になる。
「あの」
「行く?」
「え、ええ」
最初のコメントを投稿しよう!