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さて、今日はどこから見ようか。そんなことを思って図書館の中をきょろきょろと見渡す。
それほど利用者もなく、今はとても広々としている。試験時期ならいざ知らず、図書館とは概ね空いている場所だ。それがいいか悪いか。愛佳は興味がない。この空間が居心地がいい。それだけで十分だった。
「いた」
そして、それだけ少ない人数だから、毎日のように利用している人というのは、なんとなく顔を覚えてしまうものだ。そしてその一人が、今見つけた人物。
すらっと背が高く、薄茶色の髪が特徴的な青年だ。いつも、何か本を読んでいる。今日も窓際の席で、ゆったりと本を読んでいた。そうやって本を読む俯いた顔しか見たことがないが、なかなかのイケメンだと愛佳はつい、彼を探してしまう。
「でも、何年生なんだろう。というか、何学部。ああ、色々と知りたい。でも、声を掛けるのはなあ」
というのが、最近の愛佳の悩みでもあった。図書館で見つけた、ミステリアス男子。なんてそそられる。そのまま何か物語が始まりそうとか、少女のように胸を高鳴らせてしまう。
が、現実は、そのミステリアスさが邪魔をして、声を掛ける隙すらない。一体、彼は何者なのだろう。
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