図書館に棲む落ちこぼれの神様

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「そういえば、いつ見てもいるし」  愛佳は毎日のようにやって来ているが、それは講義の空き時間であったり、朝早くだったり、もしくは帰る前だったりと色々だ。1日に1回しか来ない日もあれば、何度も来る日もある。  そして、そのたびに彼はいるのだ。いつも何か本を読んでいる。ひょっとして、講義に出ずにずっと本を読んでいるのだろうか。 「それって、単位を落とすよなあ」  愛佳は書架の本の背表紙を眺めながら、お節介なことを考える。と、丁度良く、探してた本を発見した。 「これこれ」  愛佳は生粋の日本史マニアでもある。この大学に入って、図書館にある好きなジャンルの本を手当たり次第に読んでいるほどだ。今日見つけたのも、戦国武将の黒田官兵衛についての本だった。 「ま、本物は大河ドラマみたいではないんだろうけど」  そんなことを思いつつ、ウキウキと閲覧スペースへと行く。すると、先ほどの青年がまだ本を読んでいるのが目に入った。 「――」  いつも、チャンスと同じ並びの椅子に腰掛け本を読む。でも、自分も読書に没頭してしまって、声を掛けることはない。それでも、その時間を楽しむようにしている。  悲しいかな。現実の男よりも戦国武将や歴上の人物に興味がある。だから、このくらいの距離感で、勝手に本好き仲間と思っているくらいが丁度いい。
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