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「ああ、ごめんごめん。混乱させるか。実はね。毎日のように図書館を利用している美少女がいるって、その知り合いが気にしているものだからさ」
「び、美少女!?わ、私ですか?勘違いでしょう」
全然綺麗でも美しくもないし、それに少女という表現には違和感がと、色々と思う愛佳だ。それに、寺本は苦笑する。
「今時の子には珍しい、奥ゆかしさだねえ。そうか。それで静嵐も気になったのか」
「せいらん?」
聞いたことのない、多分誰かの名前だろうということしか解らない単語に、愛佳はさらに困惑する。
「ああ。その情報をくれた子ね。彼もまあ奥手というか、色々と気にするタイプというか、見かけるけど声を掛けていいのかなって思っているというか」
寺本は先ほどまでの明快さとは異なる、何だか奥歯に物が挟まったようなことを言う。
「あの」
「まあ、気が向いたら、声を掛けてみてよ。それを言いに来ただけなんだ。静嵐も、こんなおじさんばかりを相手にしているより、可愛い子と話した方が楽しいだろうからね」
「えっと」
まだまだ話が見えないままだ。しかし、静嵐に該当する人が一人しか思い浮かばないのも事実。
「あの人、史学科の人なんですか?」
一先ず、その疑問から口にしていた。毒物の本にマルクス経済学の本。他にも宮沢賢治を読んでいたり司馬遼太郎を読んでいたりと、乱読している彼は、何学部の人なのか。
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