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「ううん。一応はそうかな。扱いとしては」
「え?」
「ま、その辺は本人が話す気になってからってところかな。悪い子じゃないし、変な下心があるわけでもないんだよ。ただね。最近は図書館を利用する子って減ってるだろ。だから気になったんだと思う。君も、気になっているんだよね?」
「ま、まあ」
そう指摘されて、顔が赤くなるのを自覚する。向こうは何とも思っていないし、たまたま近くの席に座ってくる学生としか思っていないだろうと考えていたのに、気にしていたのかと、いまさら気付いたせいだ。恥ずかしい。絶対に自分を気にしている変な女子と思われているに違いない。
「大概の本は読んでいるからさ。話題には困らないと思うよ。たまに、話し掛けてあげて」
「え、はい」
そう言われて図書館へと送り出されると、絶対に今日、話し掛けなくてはならないではないか。愛佳は困ったなと思いつつも、いつも通りに青年の姿を探す。
「あれ、ちょっと待って。静嵐ってどう考えても下の名前よね。上は?名字は?」
しかし、肝心の第一声を考えた時、名字を知らない事実に気付いて愕然とした。いくら向こうも顔を覚えている、そして何故か名前も知っているらしいが、とはいえ、いきなり下の名前を呼ぶのは躊躇われる。
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