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広江 翔真
遠距離恋愛になって、別れてしまった彼。
長いまつ毛。細い顎のライン。瞳を隠すさらさらした前髪。小さいけれど翔真の写真。
化粧品メーカーの宣材写真に、どうして翔真が。彼はデザインの会社にいるはずなのに。
「格好いいよな、彼」
翔真の写真に目を奪われていたら、暁が話してくれた。新しい香水と口紅の広告に翔真が起用されたことを。次のパーティーに出席することも。
「モデルは一度きりらしいよ。本業のデザインを辞める気は無いらしい」
間違いない、翔真本人だ。
どうしよう。まさかこんな形で翔真の消息を知るなんて。胸がぎゅっと鷲掴みされたように痛い。
「何故、泣く?」
暁の指が、頬を包み込んだ。
え、私泣いてる――?
知らないうちに、涙が頬を伝わり落ちている。
「泣くのは反則だろ」
そっと抱き寄せる腕に、抗える気力は残っていない。暁の胸の中、私は肩を震わせて泣いてしまった。
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