Candytuft[甘い誘惑] 

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 ドアチャイムを鳴らすが応答が無い。すれ違いで部屋を出たか? スペアのカードキーを差し込む。ゆとりある玄関フロアーから奥へと進むが、リビングから先、ルーフバルコニーにも水姫の姿が見えない。  ベッドルームか。我が姫は何処に隠れたんだ。  ノックをするが返事が無く、静かにベッドルームの扉を開ける。キングサイズはあるだろう、広いベッドに横たわる水姫を見つけた。 「水姫」 長いまつ毛が伏せられて完全に寝入っている。 「やば……」 可愛くて仕方が無い。不覚にも寝顔に見惚れた。水姫の髪を撫でる。俺は一度、この肌にふれている。  あの日の水姫は、まだ大人になる前の初々しい女たった。系列会社に出向した先に水姫は勤務していた。愛らしい表情が俺の視界に入り込むまで、時間はかからなかった。  眠る水姫の頬にふれる。あたたかな体温が指先に伝わる。 「う…ん……」 「起きたか?」 僅かに濡れた唇から息が漏れて、水姫が目を覚ました。
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