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「え、えっ……」
眠りから覚め、突然の俺の姿に水姫は驚いて目を大きく丸くする。
「ごめんなさい、私すっかり寝てしまって」
だめだ―― 可愛くて仕方が無い。慌てて飛び起きた水姫を、強く腕の中に抱きしめた。
「は、速水さん!?」
腕の中、水姫がジタバタ暴れると、なおさら可愛くて離したくなくなる。
「放して、速水さん」
「婚約者を抱いて悪いか」
水姫の首筋に唇を近付ける。薔薇の残り香が微かに匂い立つ。まとわりつく甘い香りに惑わされる。
「だから、私は婚約なんて」
少し―― 黙れよ。
うるさい水姫の口を塞ぐ。頬を抑え込んで、愛らしい唇を吸い上げる。
水姫の息が単調に荒くなる。抗うとするからもっと欲しくなる。
「好きな人がいるの」
潤む瞳が俺を見詰めて手を払うとする。艶っぽい唇が小刻みに震えるたび、俺の鼓動は高鳴りを告げていく。水姫を手に入れたい。
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