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【side_水姫】
鉄柵の門構え。石畳を抜けると三階建のお屋敷がある。手入れの行き届いた花園が左右に広がり、四季毎に見事な花が咲く。
イベリスの赤や白の花びらから、甘くて強い香りが立ち込める。【Hotel・Candytuft】その花の名前が付いたホテルでのことが、頭から離れない。
「初恋の想い出……」
そんな花言葉だった気がする。私の初恋も、初めての相手も。あの暁。
その日の夜、ようやく叔父様に会うことができた。形だけだと聞いていたお見合いの件を、叔父様に問い詰める。
「正式な婚約って、どういうことです?」
「あ、いや、……すまない」
カップを持つ手を放して、叔父様はしどろもどろに契約と決定について話をしてくれた。
全てを聞いた私は大きなため息。
「つまり、それを集めなければ結婚は御断りできない?」
「まあ…… そうだが。速水くんは承知したと聞いてるし、問題は……」
だから大問題なんです、叔父様。
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