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「叔父様、何度もお話申し上げてますけど……」
だけどそれ以上が言葉にできない。
翔真はモデルとして、化粧品メーカーの広告に起用されていた。一度きりだとしても、それさえ知らなかった私を本当に迎えに来るんだろうか。
「確認致しますけど、結婚を止めるには、五つ揃えるより、それしかないんですね?」
「結婚は速水くんの父君が熱望してるからね。資金援助時の一番条件だったんだよ」
叔父様、せっかくの渋いお顔が冷や汗かいてます。
「だから早苗さん、家出なんて」
つぶやいた私に、叔父様は口を滑らした。
「ん? 向こうは最初から水姫を指名し…… あっ」
慌てて口を閉じても ……もう遅いです。
「嵌めましたね、叔父様」
もうため息どころじゃ無かった。
「少し…… 頭を冷やして来ますわ」
あたふたする叔父様を残して、夜の花園に出た。
冷たい夜風に入り混じる花々の香りが、身を包み込んで心が少しだけ落ちついていく。
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