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ゆっくりとお屋敷の花園を散歩していたら、背後から聞き覚えのある声が響いた。
「――水姫様」
「北川さん」
月の明かりを背にして、北川さんがそこに立つ。
「車にお忘れでしたよ」
差し出されたブレスレット。
「やだ、いつの間に切れたのかしら」
「直してございますから。手をお貸しください」
差し出した手首に、細く煌めくブレスレットを付けてくれるけど……
……近い。この距離感は近過ぎる。その綺麗な顔をあまり近付けないで。
暁が『動』なら、北川さんは『静』かな。
いやいやいや、余分なことを考えている時じゃなかった。……あれ? なんか笑われてる。
「あぁ、すみません。あんまり可愛らしいので」
「えっ?」
「よく表情の変わられる方だ」
肩を揺らして笑う顔が柔らかい。落ちついた雰囲気が本当に素敵だけど…… 笑い過ぎですってば。
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