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「水姫様、裾に――」
スッと伸びた腕が、薄く色付いた花びらを摘む。
「イベリスの花びらか」
「ありがとう」
「ご存知ですか。イベリスの花言葉」
初恋の…… 口を開きかけたら北川さんが先だった。
「――甘い誘惑」
視線がまっすぐに、絡み合った。端正な顔立ちが、月の光に明るく照らされて本当に綺麗に映える。
「い、いえ。知りませんでした」
暁の強引な瞳とは違う。北川さんは、全部を見透かすみたいな瞳をする。
どんな人なの―― 動揺してしまう。
「本当に、よく表情の変わられる方だ」
……何度も肩を揺らして笑わないでください。
それからすぐに北川さんは帰られて、私もお屋敷の中へと戻った。
「甘い誘惑……?」
智也も暁も、北川さんも。あれ……? なんだかやけに、私の周りが動き始めてる。
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