1631人が本棚に入れています
本棚に追加
/104ページ
薔薇[最愛]
【side_水姫】
お見合いをして欲しい――?
「そんな、叔父様。無理です」
思わず私は声を高くして、首を横に振った。
「水姫に頼むより、手が無いんだ」
目の前で頭を抱えて悩んでいるのは、亮平叔父様。
柱時計がカチカチ音を刻む。書斎を兼ねた部屋には亮平叔父様と私の二人だけ。
此処は古いけれど、亮平叔父様の所有する、洋風外観のお屋敷。学生時代に両親が他界してから、私は叔父様のところに御世話になっている。
「何度頭を下げられても無理です」
「形だけでいいんだ。後はまたどうにかする」
そんなに必死に頼まれても。どうしよう。
「早苗さんを説得は? されました?」
亮平叔父様は困った表情ばかり浮かべて、大きなため息をついた。
「一切連絡が取れなくなった」
逃げたのね…… 早苗さん。
最初のコメントを投稿しよう!