1624人が本棚に入れています
本棚に追加
/104ページ
Candytuft[甘い誘惑]
【side_暁】
何故、泣いてる? 腕の中泣きじゃくる水姫をなだめていた。
か細い肩が小刻みに震える。涙で濡れる瞳が揺れる。その表情を見ていたら、抱き締めずにはいられない。
「……座れ」
水姫を横に座らせる。まずは落ち着かせよう。此処は取引先だ、自社じゃない。
「どうした?」
視界に入って来たのは、先程の宣材写真。……彼か。なるほど、そういうことか。
「……帰るぞ、水姫」
此処での用件は済んでいる。
水姫の腕を取り会議室を出る。自社の営業マンに後を託し、北川に車を出させた。
「ごめんなさい、お仕事の邪魔をして……」
上目遣いに謝られたら、怒る気は削がれる。
「暁様、どちらへ」
「そうだな…… Candytuftへ向かってくれ」
自社ホテルの名を北川に告げる。
最初のコメントを投稿しよう!