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「……ははっ。きったねー出来」
テーブルの上に降り立った金色の”ツル”を前に、私は思わず苦笑した。
尻尾の先端は微妙に縁がずれて裏地の白が見えてるし、両翼には方向を間違えて折った跡がそのまま残っている。
一枚しかないから大事に扱おうと、他の色紙を何枚か練習台にした上で挑んだ本番だったが、脳内の理想を完璧に形にすることはできなかった。
犠牲になった挙句、屑ゴミとして丸めて捨てられた他のツルらに申し訳が立たない。
それでも、慎重に引っ張り広げた背中はきちんと膨らんでくれたので、改めて観察してみると『まぁまぁよく折れたな』と自画自賛できるくらいには整っている。
次いで、ふと何ともなしに店内を見渡した。
さすが日曜日ということだけあって、普段はカウンター席より人気のないボックス席の大多数は子供連れの夫婦が陣取っている。
どれだけ小奇麗なファミレスでもこんな辺鄙なところに建ってちゃ客も来ねえだろ、と他人事レベルで気にはしていたが、この様子を見るにどうやら無用な心配らしい。
いやそんなことより。
「……遅い」
料理ではない。
”妹”の方だ。
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