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ミサトの唐突な言葉にキョウジは眉を寄せた。
「あぁ、うん……俺もこの前行って花を手向けて来たよ。……それで?」
ミサトは紅茶で唇を湿すとゆっくりと顔を上げる。
思いがけない真剣な眼差しに真っ直ぐ見つめられ、キョウジは戸惑った。
「その夜……夢にユウジが出て来たわ」
「夢?」
拍子抜けしたキョウジに対し、ミサトは淡々と語る。
「夢の中でユウジが言ったの。『俺は殺された』……って」
「殺……確かにユウジは事故だったから結果的にはその相手に殺されたって事になるだろうけど……」
ミサトはぬるくなった紅茶を一息に飲み干した。
キョウジが空になったカップを持ち、新しい紅茶を淹れに行く。
その後ろ姿に向けてミサトは鋭く放った。
「殺されたのは……“キョウジ”、貴方によ」
一瞬の“間”の後、キョウジが背を向けたまま答えた。
「……確かにそうかもな」
そのまま給湯室へと消える背中を見てミサトは戸惑った。てっきり否定すると思っていたからだ。
「俺は……アイツの事を救えなかった。アイツはきっと恨んでる。恨まれて当然なんだ。ユウジにも……ミサトにも……」
キョウジが新しい紅茶をミサトの前に置いた。
ミサトは動揺していた。
本当に嘘なのかしら? それともあの女性が嘘を?
ミサトは錯覚しそうになりながらも必死で否定した。
あの女性が嘘をつく理由が無い。何の利益も無いどころか下手をすれば自分の身が危ないのだ。
やはりキョウジが嘘をついている。
ミサトは無意識にカップを傾けた。熱い塊が喉を落ちていく。自分の気持ちも次第に落ち着いていった。
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