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「御馳走様。とても楽しかったわ」
車から降りようとしたミサトの手をキョウジが取った。
「キョウジ……?」
「……ミサトがユウジを忘れられないのはわかってる。だけど……こんなミサトを見てられないんだ。俺は、俺は……」
キョウジは言葉を切り、そっと手を離した。
「ごめん……こんな事言われても迷惑だよな」
ミサトは引いた手をぎゅっと握り、静かに首を振る。
「迷惑だなんて……でも……ごめんなさい、やっぱり私」
「いいんだ。“わかってる”って言ったろ? 気持ちを伝えたかっただけだから……明日からまたいつも通りに接してくれよ」
「……」
キョウジは車を降り、助手席のドアを開けた。
「おやすみ、ミサト」
「……おやすみなさい」
一人、部屋に戻ったミサトは動揺していた。
《キョウジが私を……?》
そんな事、考えた事も無かった。ミサトの世界はそれほどユウジによって占められていたのだ。
目を閉じたミサトの脳裏にユウジの笑顔が浮かぶ。
「ユウジ……」
呟いたミサトの頬に涙が伝った。
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