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「……!!」
ミサトは言葉が出てこなかった。
様々な思考が断片的に浮かんでは消え、渦巻き、次第に小さく重い“絶望”として胸に突き刺さった。
全て“嘘”だったのだ。
ユウジの臨終を告げたあの時も。
葬儀の際のあの時も。
レストランや帰りの車の時も。
全てがミサトを手に入れる為のキョウジの嘘だったのだ。
そして、その為に。
ユウジを死に追いやり、ミサトの世界を壊したのだ。
ミサトの眼から涙が溢れた。
周りの客が怪訝そうに二人を見ていたが、そんな事は気にもならなかった。
許せない。
だが確固たる証拠が無い以上、警察に言った所で相手にされないだろう事は目に見えている。
女性の証言を頼るにも彼女の失うリスクの大きさを考えると絶望的だった。
「……話して下さってありがとうございました。でも……もう忘れて下さい。証拠が無い以上、どうしようもありませんもの」
ミサトは女性にそう告げた。
ミサトは決意したのだ。
自分だけで解決しよう、と。
心配そうにこちらを見る女性に笑顔で会釈し、足早にその場を後にした。
キョウジに会う為に。
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