無心

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無心

 多くの小説家が話の冒頭に何らかの文章を入れるものである。それは幻想的な様を見せることによって、その者の脳裏を白に染めることに焦点を置くからだ。そうでなければ、ファンタジーなど語ったところで、現実との差異によって受け入れ難いものになるのだ。  だから、この空白には適切な言葉を入れなくてはならない。そこに当てはまるもの。それは、易々とは見付からないものである。  ところが、この物語においては、容易であった。なぜなら、適切な言葉は、一つしか存在しないからだ。  それは紙と鉛筆に似ている。ペンでも筆でも構わない。そこに実在しなくてもいい。それらが導き出す答え。恥じらいなく言おう。  私は黒であると。
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