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放課後オークション
中学からの親友が妙な質問をしてきたのは、高校に入って初めての梅雨が開けた頃だった。
「ゆいー、今いくら欲しい?」
「いくらって……そりゃあ、貰えるものならいくらでも?」
唐突にこんなことを聞いて、いったいどんな意図なんだろうと考えていると、質問に付け足しが来る。
「んじゃあ、例えば一晩体を売るとして、いくら払ってくれたら満足?」
こやつ、可愛い顔してなかなか凄いことを言いやがる。
「売らないよ。愛花ったらもう、何言ってるの?」
「えー、売るって想定しての話だよー。」
質問に答えてない。それに「えー」っていうのが何に落胆した「えー」なのか問いただしたい。
「そうだな……百万ならどう?」
『どう?』じゃないよ。売らないものは売らないんだよ。と、言いたいところだが、突如会話に出現した大金に、正直ちょっぴり気持ちがよれてしまう。
「むぅ……ちょっと迷うな……でも、売らないよ。知らない人とだなんてまっぴらごめんだもの。」
「知ってる人だったらいいの?」
「別に、そういうわけじゃないけど……でも知らない人よりは、それなりに信用ある人の方が、ね。知らない人に比べたらだよ?」
「うーん。じゃあその、それなりに長い付き合いの、それなりに仲がいい人で、三百万だったら?」
「いやー、まだまだ。」
なんかノリが競りみたいになったなと思って、それっぽく言ってみる。
「七百五十万。」
「もうひと越え。」
「九百!」
「あとちびっと。」
「一千万円!」
「かんかんかーん。一千万円でらくさーつ。」
結構盛り上がったな。うん。楽しかった。身、売っちゃったけど。
「つまりゆいちゃんは一千万円あればそれなりに仲のいい人相手に体を許す、と。」
「いや、そこまで大金になると流石に色々と怪しいから、前払いね。てか私に一千万って……我ながら恐ろしく高い値を付けたものだね。まあどうせ誰も買わないだろうけど……」
笑いながら話していると、彼女が椅子の下から何か取り出していることに気づく。
「ん? ……愛花ちゃーん? そのアタッシュケースは何かな?」
おもむろに開かれるそれの中には、見たこともない数の福沢諭吉が綺麗に並べられていた。
「ここに一千万あります。ご要望通り前払いで結構。もちろん場所代は別で。」
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