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「それはつい最近ですか?」
「気付いたのは、一時間くらい前だから……多分」
話を聞く限りだと、ここが亡くなった場所でもなく、浮遊霊のように彷徨った挙句たどり着いた場所というわけでも無さそうだ。ということはこの場所に意味がある。
「ここに来たことは?」
「……ああ、あるよ。ってか、思い入れがあり過ぎて来たのかもって……そんな気はしてた」
大輝さんの視線が、通りの街路樹と街路樹の間にある小さなスペースに向けられる。顎でそこを示すようにして、少し切ない表情になる。
「あの辺で、幼馴染の颯太と中学の時から高校卒業するまで、週末の夜ずっと弾き語りのライブしてたんだよ。颯太とは保育園から一緒で、家も近かったし、毎日どっちかの家で遊んでさ。中学の時に二人とも同じバンド好きになって、楽器に興味持つようになって……気付いたら毎日どっちかの家でギターの練習してるような生活になってたんだ」
懐かしむように思い出を語っていた大輝さんの表情が強張る。
「……高校はさ、地元の方がいいって同じ高校に入ったんだけど、颯太は俺より頭いいから、無理して合わせてくれたんだ。でも大学まで俺と一緒にFラン大に行く必要ねえって……そんなことされたら迷惑だって言ったんだ」
「ふむ、颯太さんの事を思って言ったこととはいえ、迷惑だ、は言い過ぎましたね」
大輝さんは溜息を吐いて、小さく頷いた。そして、言いにくそうに頭の後ろを掻く。
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