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「ばらばらの大学に行くことが決まって、颯太は大学がちょっと遠いから寮に入ることになったんだけど……卒業式の後、颯太が……俺のことがずっと好きだったって、言ったんだよ」
その時のことを思い出して恥ずかしくなったのか、耳まで真っ赤になっている。
「『大輝は迷惑だっただろうけど、俺は一緒に居られるだけで幸せだった。多分これで最後になるけど、今までありがとう』って……泣きながら、笑ってた」
大輝さんが颯太さんのことを思って突き放した言葉は、叶わない恋心をずっと抱いていた颯太さんを傷付けてしまった。そして、互いの想いは擦れ違ってしまったのだ。
「颯太さんには、何か告白の返事をしたりしたんですか」
首を横に大きく振る。
「その時は何がなんだか分からなくてさ。それよりも別れを告げられた感じだったから、そっちの方がショックで……そのまま会わなくなったから……」
もしかしたら、これが大輝さんの未練なのかもしれない。この場所に居るのは、またあの頃のように颯太さんと一緒にギターを弾いて、歌いたいと思っているからなのだろう。
「……俺、馬鹿だし、また何か余計なこと言って颯太を泣かすかもしれないから……曲にしたんだよね。それをカラオケボックスで録音して、明日歌詞と一緒に颯太に送ろうって……」
「その直後が今、ですね」
大輝さんは絶望するように頭を垂れて、小さく頷いた。
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